用地買収と土地改良事業との関係
1.土地改良事業との協調による公共用地等の取得について
2.土地改良事業決済金について
3.土地改良事業受益地転用と補助金返還について
用地職員に必要な知識ですので解説いたします。
A 異種目換地による手法. 土地改良法第53条の2第1項
換地を伴う土地改良事業において、ある人の従前地が農用地であるのに、その人の換地を非農用地区域に定めるもの。
つまり、計画公共用地等に土地を提供する意志のある人の従前の農地について、この人の換地を道路や河川予定地あるいは工業団地予定
地等の非農用地区域に集めて定めるもの。
異種目換地は、共同減歩の対象とならない。
道路・河川事業等の公共事業の起業者側は換地処分後、この土地を各換地の所有者から用地買収し、売却代金を支払う。
特徴
公共用地買収時期は原則として換地処分後とするのが原則であり、この手法はこの原則に合う
従前の土地の所有者が換地処分により一旦非農用地区域に換地を取得し、その後売買することになるので、その各換地の取得者と用
地交渉を成功させる必要がある。換地計画書上の換地取得者名には起業者名は載らない
起業者は従前地の分筆不要
異種目換地をするには非農用地の底地権利者全員の換地に対する同意必要
土地譲渡者に対し、所得税の壌渡所得の5,000万円の特別控除制度の対象になる。従って土地改良区からは歓迎される手法と考えら
れる。
換地の買収登記が容易
用地買収の時期は換地処分後なので遅くなることがある
B 従前地売買による手法(事前買収方式)
計画公共用地等に土地を提供する人の従前の農地について、非農用地区域に一時利用地指定後、換地処分前に従前地を買収するもの。
この時、起業者側は用地売却代金を支払い従前地の所有権移転登記を受けることになる。
買収は従前地について行うため、バラバラに散在する従前地を買収することになり、従前地バラ買い方式と呼ばれることもある。
換地処分まで長年かかるので、すぐに買収したい場合にこの方法がとられることがある。
従前地の1筆の一部を買収する場合は、実務上、分筆登記が必要となる。工事により従前地の状況が変ってからでは、この分筆登記は原
則としてできない。
非農用地区域への一時利用地指定は、共同減歩の対象とならない。
公的機関による住宅・工業団地等の開発の場合は、開発側が分譲区画のレイアウト完了後各区画毎に再度各区画の一時利用地に対応す
る従前の土地を再分筆する必要が生じる。
従前地買収時にはその土地は周辺の農地、つまり農地を農地として換地される土地と見た目には変わらないが、将来の地目転換が見込
まれる土地として買収することになろう。
特徴
用地買収が比較的早くでき、土地の売却代金が比較的早く支払える可能性がある。被買収者にとって都合がよいであろう。
非農用地の底地権利者の換地に対する全員同意必要。
一旦開発側名義に従前地を登記するため、従前地を工事前に分筆しなければならない場合がある。
換地計画書には従前地と、それに対応する換地の取得者の双方に起業者名が載る。つまり起業者が換地処分を受ける。普通換地の
一種である。
公共事業の起業者や団地開発側は関係者の合意が得られれば一時利用地の状態でも非農用地区域内の工事をできる可能性はある。
団地開発側が一時利用地の状態のまま分譲する場合は、従前地を表示して土地売買が行われる。転売を受けた企業が金融機関から
融資を受ける場合には、土地改良区の一時利用地の証明書と、従前地をその一時利用地に必ず換地する旨の確約書を添付する。
土地譲渡者に対し、所得税の壌渡所得の5,000万円の特別控除制度の対象になる。
換地処分前の買収になるが、非農用地区域に一時利用地指定されている土地の売買なので土地改良決済金を徴収されることはない。
C 不換地および特別減歩みあいの創設換地による手法 土地改良法第53条の3の2第1項
従前地の不換地および特別減歩の地積にみあう範囲内で、新たに非農用地を生み出す方式。
計画非農用地に土地を提供する人の従前の農地について換地を与えず又は面積を特に減じて換地を定め、変わりにこれらの人達は、精算
金を取得する。
不換地及び特別減歩により特に減じた地積の合計面積の範囲内で新たなまとまった換地を生み出し、換地処分により、これを開発側が精算
金を支払って原始取得する。
特徴
開発側は各個人から土地を買収するのではなく、換地処分により開発側が換地を原始取得する。従って各個人との用地交渉は不要。
非農用地の底地権利者全員の換地に対する同意が必要。
換地処分により、従前地の所有者だった人は、非農用地との関係が切れる
不換地の人は、精算金の取得に対し、所得税の譲渡所得の800万円の特別控除制度の対象になる(租特法34条の3第2項)。異種
目換地の場合よりも控除額が少ないので、この手法は土地改良区組合員からは好まれないであろう。
開発側が支払う精算金は、補償金的正確のものと考えられている。
換地取得の時期は換地処分後なので遅くなることがあるが、まとまった換地を取得できる。
D 共同減歩による創設換地による手法 土地改良法第53条の3第1項
土地改良法では、土地改良事業地区内のすべての農家の負担による共同減歩により、国、県、市町村、土地改良区等が、その土地改良事業
で新設する農道、水路などの土地改良施設等の用地を換地処分により取得すると規定されている。
特徴
この手法は本来、土地改良施設等の用地の創設を規定したものであるが、土地改良事業施行区域内の河川用地を共同減歩による
創設換地により生みだし、これを土地改良区等が無償取得し、これを改良区等が河川事業施行者に売却することが考えられる。
E その他
☆農業構造改善の見地から、非農用地区域設定区域は適切な位置であることを要し、非農用地区域の合計面積は土地改良施設に係るもの
を除き土地改良事業施行地域面積の30%以内とすることと解釈されています。
☆起業地内の補償物件に対する補償の相手方はその補償物件の所有者に対してであり、底地の所有者に対して補償することになります。
土地代金の支払相手とは相違する場合があります。
☆起業地内の工事は起業者側が行う。土地改良側は換地で用地を確保するが、農政の予算であるため起業地内の工事はしない。